高齢者の引っ越しで気をつけるポイントとは?
超高齢化社会といわれる日本ではさまざまな事情で引っ越しが必要な高齢者が増えています。
一戸建ての維持が難しくなることによる集合住宅への住み替え、離れて暮らしていた子供家族との同居、または、老人ホームなどの施設への入居など、その事情もさまざまです。
高齢者は体力が落ちているため、ちょっとした転倒で骨折などの大けがにつながり、持病があるため荷造りや運搬ができない場合があります。
肉体的以外にも、引っ越しの準備や計画、煩雑な手続き、そして多くの決断が難しくなってきます。
ここでは、このような高齢者が負担なく引っ越しをするため、気をつけるポイントについて紹介します。
高齢者の引っ越しで問題になること
引っ越しは若い人や働き盛りの世代でも大きな負担になります。多くの項目について考えて決めなければならず、時間と労力をかけ自らが動く作業が膨大にあります。
高齢者の場合にはこれがさらに大きな負担になるのです。
体力的な問題
負担になる第一の理由は体力が衰えていることです。重い家具や家電の移動は困難なだけではなく、無理をすると大けがをすることがあります。
また、小物類など多くの物を長時間かけて運ぶだけの体力が続かないでしょう。
そして、持病で無理ができない、身体の自由が利かない、または寝たきりという場合もあり、通常の引っ越しは難しいものになります。
必要なものの整理に時間が掛かる
高齢になると、引っ越しで必要なやるべきことを整理し、ひとつずつ決断し実行していくことに時間がかかり、必要なことが抜けてしまい順序を間違えてしまうこともあります。
また、荷物が必要か不要かの判断が難しくなります。引っ越しは不要なものを処分する良い機会ですが、引っ越しの経験が少ない高齢者は物が多くなっています。
暮らしが長いほど、大切な思い出の品があるため、自分だけでは処分する決断は難しいのです。
安心・安全には高齢者向けプランの活用
多くの負担を強いられる高齢者の引っ越しの強い味方になるのが、高齢者向けの引っ越しプランです。
これらは、専任アドバイザーのサポートを受けながら、引っ越しの準備ができるほか、当日の作業のすべてを引っ越し業者にお任せできます。
料金はフルパックメニューにさらに独自のサービスが付いているため、通常よりも割高ですが、不安の多い高齢者にとっては安心・安全の点で適したプランです。
引っ越し業者各社でメニューを出していますので具体的にいくつか紹介します。
1.ハート引越センター「安心フルサポートプラン」
ハート引越センターはシニアの引っ越しに特に力を入れていますが、特徴は同じ営業担当とサポートレディが事前相談から、引っ越し後のアフターサービスまで一貫して面倒を見ることです。
サポートレディとは、収納や整理に関するトータルな知識を持つ女性のスタッフです。
このため、途中で担当窓口が変わり、誰に何を聞いたら良いのかわからないといった混乱がありません。
通常の引っ越し作業以外にプランに含まれているサービスは以下の通りです。
- 部屋のレイアウトの提案
- 物のいる・いらないの選別
- 不要品の相談・処分
- 暮らしやすい収納の提案
- 公共料金の手続き
- 引っ越し後のアフターケア
2.アート引越センター「シニアパック」
アート引越センターの60歳以上の家族がいる世帯向けに出しているプランである「シニアパック」は、「暮らしの整理士」という整理・片付け、部屋のレイアウトのプロがアドバイスしてくれます。
このサービスは同社の「アートエプロンサービス」で、現場での掃除、整理整頓、模様替えなどの業務を1年以上経験したスタッフが社内認定を受けて行うものです。
引っ越しの一ヶ月前にお宅を訪問して、部屋のレイアウトや整理・整頓について2時間以内無料でアドバイスを受けられます。
3.ハトのマークの引越センター「楽々シニアプラン」
ハトのマークの引越センターではシニアプランで、親切丁寧な対応で高齢者に快適な引っ越しサービスの提供を掲げています。
標準サービスの楽々プランよりも、ゆとりある作業員を配置し、最上級レベルの引っ越しを目指しています。
コンシェルジュサービスとして、引っ越しの当日に「引越管理人」が一日立ち合い、荷物の整理や不要品の処分についてその場でいろいろと相談できるため、スムーズな引っ越しを進めることができます。
豊富なオプションサービスの活用でより負担を軽減
家具・家電の処分
高齢者の場合、古い家具や家電が不要になることが多くあります。これらを自分で業者に依頼して処分の手配をするのは大変なことです。
一部の引っ越し業者のプランには標準サービスに含まれる場合もありますが、オプションサービスでも積極的に活用することで負担が軽減されますので見積もりのときに確認しましょう。
公共料金の手続き
電気、水道、ガスなどの公共料金の変更、廃止、開始の手続きは煩雑で高齢者の負担になりますので、家族で代行してくれる人がいない場合は手続き代行の活用を検討してみましょう。
家電・カーテン・収納グッズの手配
新居で使うために新たに購入するものをひとつひとつ揃えるのは手間がかかるものです。
引っ越し業者のオプションサービスで購入できる場合、品目の多い方は一部でも活用することで負担が軽くなります。
家具の組み立て・設置についても購買店のサービスにない場合には利用すると良いでしょう。
老人ホームへの引っ越し時の注意点
老人ホームへの引っ越しの仕方
家族が運べるくらいの少ない荷物であれば、身内だけの引っ越しも可能ですが、老人ホームの壁や床に傷をつけたり、他の入居者への配慮など難しい点もあります。
このことから基本的には引っ越し業者に任せたほうが安心です。
また、家族が同居していない場合には、必要な荷物が何か、どこに何があるのかわからないため、高齢者の引っ越しを得意とする業者を入れて、家財の整理から早めに始める必要があります。
また、本人に確認しても正確な答えが返ってくるかわからない状況では特に必要となります。
老人ホームの居室はワンルームサイズが一般的です。これまでのすべての荷物は入らないため、何を持っていくかの選択が重要です。
自宅を処分する場合には、老人ホームに持っていけないものをトランクルームに預けるのもひとつの方法です。
そして、病院を退院してそのまま老人ホームへ入居することもあります。
この場合、家族がすべての入居準備を行う必要がありますが、荷物の移動以外にも、老人ホームへの入居手続き、病院の退院手続きおよびそれぞれに必要な書類があるため、早めに老人ホーム、病院へ相談しておきましょう。
老人ホームへ運べるもの、運べないもの
一般的には家具や電化製品が完備されているため、自宅にあるものは運び込むことができません。
何が持ち込めるのか、持ち込んではいけないものは何かについて、準備を始める前に老人ホームの規程を確認するか担当者に聞いておきます。
介護用ベッドや寝具、エアコン、照明などは備え付けされていますが、新たに購入しなければならないものもあります。
例えば、入居時に必要になるものは、衣類、シーツ、タオル、洗面用具などで、小物収納の家具が必要な場合もあります。また、ティッシュやトイレットペーパーなどの消耗品も個人で用意します。
老人ホームに持ち込みが適さない、火器類や刃物類などは事故の防止などの点から一般的に禁止されています。
消耗品など細かなものでも、本人の使い慣れたものがあればそれを用意することが不安軽減にもつながります。
老人ホーム引っ越し用プラン
業者選びについては、通常の引っ越し業者でも対応できますが、老人ホームへの引っ越しを得意としてプランを組んでいる会社もあります。
一例として、クロネコヤマト引越センターの「高齢者ホーム入居サービス」を紹介します。
経験豊富な専属アドバイザーにより、入居時の荷物の整理・不要品処理などの事前相談と、入居後の荷物の整理・家事代行などの相談を無料で受けられます。
荷物の整理・荷づくり・不要品引き取り・荷ほどき・家事代行・家具の配置換え・ホームクリーニング・家電販売などを、必要なものだけ選択してサービスを受けられます。また、高齢者ホームの移動、退去するときの移動も対象となります。
料金は取り扱う家財の量と希望するサービス内容で決まります。容積単位で決めるため少量の家財でも対応してもらえます。
まとめ
高齢化社会が進む日本では、高齢者の引っ越しの機会はますます増えるでしょう。
これに対応するように、高齢者向けのサービスを展開する引っ越し業者も増えてきました。
業者選びのポイントは、大手業者や手頃な料金の業者に限定することなく検討の対象に入れることです。
高齢者の引っ越しで重要な点は、本人の負担が少ないこと、そして不安が少なく安心して引っ越しできることです。
事前および引っ越し時に専門のスタッフを派遣して相談を受けてくれるか。不要品の処分を請け負ってくれるか。
家具や家電の配置や配線などすぐに使えるようセッティングしてくれるか。公共料金の手続きなどを代行してくれるかなどをポイントに業者選びをしましょう。
また、老人ホームへの引っ越しでは、本人は介護が必要な状態でできることが限られるため、家族が安心して任せられる業者を選ぶようにします。
特に高齢者は環境が大きく変わることで、大きなストレスとなり、健康状態が悪化する恐れもあります。家族と引っ越し業者で、高齢者が安心できる引っ越しを第一に考えることが大切です。