高齢者向け賃貸の種類と特徴。安心して暮らせる物件はこれだ!
[公開日]2017/08/04 [最終更新日]2017/09/25 賃貸物件,一人暮らし,物件探し
高齢化と核家族化が進む日本では、単身や夫婦二人の世帯など、子供や孫の世代と同居しないことが増えています。
自立して生活できる場合でもバリアフリー設計や、食事のサービス、緊急時の通報など安心して暮らせる住まいが望まれています。
しかし一方で、通常の賃貸物件での高齢者の一人住まいでは、孤独死という最期を迎えてしまうケースも増えているのが現状です。
そのため高齢者の住宅には、本人だけでなく離れて暮らす家族にとっても安心が求められているのです。
そこで、「高齢者向け居住施設の中での賃貸住宅」を中心に、その種類や特徴、安心のための工夫について紹介します。
高齢者向けの居住施設・住宅の種類と概要
1.介護保険施設
介護保険施設には、以下の3つがあります。
- 介護を目的とする「特別養護老人ホーム」
- リハビリを目的とする「介護老人保健施設」
- 医療的要素の強い「介護療養型医療施設」
これらは、地方公共団体、社会福祉法人、医療法人によって運営されており、公共性の強い施設であるとともに介護保険制度を利用するものです。
「特別養護老人ホーム」は緊急性の高い順番で入居でき、「介護療養型医療施設」は重度の要介護者を対象としているなど、医療や介護の性格が強くなっています。
2.居住施設
居住施設には以下の4つがあります。
- 有料老人ホーム(中高所得者を対象)
- 軽費老人ホーム(低所得者を対象)
- 認知症高齢者グループホーム(認知症患者が集団で生活)
- 養護老人ホーム(介護を必要としない生活困窮者などが入る)
「有料老人ホーム」はさらに3つの種類に分けられます。
- 介護付
- 住宅型
- 健康型
それぞれ介護サービスの提供方法に違いがあり、目的や入居の条件が異なってきます。
「軽費老人ホーム」もサービスの提供によって3つに分けられています。
- 食事サービスの提供があるA型
- 自炊をするB型
- 食事や洗濯などの介護サービスが受けられるC型、「ケアハウス」と呼ばれています。
3.賃貸住宅
バリアフリー対応の賃貸住宅「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と、地方自治体の公営住宅である「シルバー住宅」があります。
「サービス付き高齢者向け住宅」は2011年に「高齢者住まい法」の改正によってできた新制度です。
介護・医療と連携した高齢者支援サービスを提供する住宅の確保が重要であることから、国土交通省と厚生労働省が共同で所管する「共管制度」として実現したものです。
これに伴いそれまであった「高齢者専用賃貸住宅」およびその一部である「高齢者向け優良賃貸住宅」、そして高齢者の入居を拒まない住宅登録制度の「高齢者円滑入居賃貸住宅」は、2年から5年の経過期間を設け廃止され、「サービス付き高齢者向け住宅」に一本化されました。
「シルバー住宅」は、国の事業である「シルバーハウジングプロジェクト」、そして東京都が行う「シルバーピア事業」がそれぞれ指定したもので、地方自治体が公営住宅などを高齢者に配慮した住宅として供給しています。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
1.入居条件
60歳以上の高齢者または要介護者・要支援者を基本としており、介護の程度は軽度を想定しています。
また、認知症には基本的には対応しないことになっていますが、条件は各施設によって異なります。
収入に関しては特に基準はなく、所得水準は中所得者を想定しています。
2.建物・設備
そのほか、多くの施設に食堂や共同リビングがあり、一部には健康管理・相談室や洗濯室があります。
3.提供サービス
安否確認と生活相談は必須になっており、加えて24時間365日の見守り体制や、医療機関との連携を売りにしていることが多いです。
生活サポート・介護サービスを提供するためには、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けることが必要です。
これらの施設では、介護職員や看護師による食事・掃除・洗濯の支援や、入浴・食事・排泄などの介護、そして機能訓練指導員によるリハビリなど、それぞれの専門職員のサービスを受けられ、介護付き有料老人ホームと変わらないサービスが受けられます。
また、介護・医療面の受け入れ体制として、ペースメーカー、人工透析、ストーマ・人工肛門、在宅酸素他を必要とする方にも対応できる施設があります。
4.他の施設との違い
老人ホームなどと違い、多額な保証金が必要ない賃貸住宅であるため入居しやすいことがメリットといえます。
また健康で自立した高齢者も入居でき、自宅と同じような自由な生活を維持できます。
その一方で介護も受けられることも大きな特徴で、同じ建物内に在宅介護事務所が併設され、ケアプランに基づいて定額制の介護サービスが受けられるところがあるのです。
制度はスタートしてからまだ6年あまりですが、旧制度からの移行も含めて急速に普及しており、利用者にとっては選択肢は豊富です。
シルバー住宅
1.入居条件
65歳以上で日常生活で自立していることが条件になっており、健康状態や自立状態の確認のため、自治体による面接を受けることが必要です。
収入については、平均月収額または貯蓄額が基準以上と定められていますが、比較的低所得者を対象としています。
2.建物・設備
部屋の面積や間取りに基準はありませんが、平均的なものでは単身者向けで35㎡前後の1DK、夫婦二人世帯向けでは40㎡~50㎡の2Kまたは2DKとなっております。
高齢者が安心して住めるよう、手すりなどのバリアフリー化がされ、緊急通報装置などが設けられています。
3.提供サービス
入居者の安否確認や緊急時対応を行う「生活援助員」が、住み込み、通勤、または訪問しています。
実際の対応範囲については各自治体により違いがあるようです。
シルバー住宅自体に介護サービスはなく、大規模な物件には在宅介護支援センターなどが併設されている場合があります。
4.他の施設との違い
「生活援助員」の存在が大きな特徴で、コミュニケーションを図るための団らん室を設けているところもあります。
また、他の施設にはない安否確認システムが導入されているところもあります。
このシステムは、各部屋の水道が使われていないことを知らせるもので、リズムセンサーと呼ばれる安否確認システムが「生活援助員」の部屋につながっています。
自立生活が前提となっているため、各入居者同士のつながりはご近所付き合いのみとなり、共同生活の意識は低いといえます。
まとめ
2010年から2020年で、単身・夫婦の高齢者世帯は約1,000万世帯から1,245万世帯と急激に増加すると予想されています。
一戸建てに住み続ける方は多くいますが、清掃や維持管理が難しくなるため集合住宅への転居の希望が増えていくでしょう。
しかし日本の高齢者住宅は不足しています。全高齢者に対する介護施設・高齢者住宅等の割合は、諸外国では10%以上であるのに対して、日本では2005年で4%程度です。
そのうち介護施設などの施設系を除く住宅は1%に満たないのです。
また日本は長寿国でもあるため、健康な高齢者、いわゆる自立して生活できる方や、積極的に人生を楽しみたい方が多く存在します。
まさにこの「今は元気だが将来に不安がある高齢者」の満足する住宅が不足しています。
数年前までは重度の要介護者や生活困窮者を救うことに大きな比重が割かれていました。
しかし、入所者が定員割れしているところもあります。
高齢者の実態やニーズの変化とこれまでの政策にはミスマッチが生じているのです。
その点2011年に始まった「サービス付き高齢者向け住宅」は、今後大きな役割を果たすことでしょう。
高所得者向けの「優良老人ホーム」や低所得者向けの「シルバー住宅」と合わせ、今後は様々なニーズに適合した住宅の供給が望まれます。
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