借主と連絡がとれない場合、不動産業者や貸主はどのような対応をとるの?
[公開日]2017/05/23 [最終更新日]2017/09/25 書類手続き,トラブル,契約違反,物件探し
不動産業者や貸主にとって、借主の連絡先はとても重要なものです。
しかし入居のときに、連絡先を書かなかったり、電話番号を間違えて記入したまま契約に至るすることはあるのでしょうか。
また契約後に電話番号が変わったにもかかわらず、借主が連絡しなかった場合はどうなるのでしょうか。
今回は、借主の連絡先に焦点を絞って説明していきます。
契約時に連絡先の電話番号を借主が間違えた場合は?空欄でも契約できるのか?
物件を探すために初めて不動産業者を訪れた時、多くの場合は「お客様受付カード」の記入を求められます。
名前や住所、生年月日、勤務先のほか、電話番号やメールアドレスの連絡先、物件の希望条件などを記入します。
このカードは、不動産業者が物件を紹介する前に、お客様の大まかな情報をつかむためにあるのです。
最も重要視しているのは勤務先です。
それは、家賃の支払い能力を判断するだけでなく、貸主の了解が得られそうもない物件を最初から除外するためです。
また、内見日時の連絡や手続きなどを案内するために連絡先の記入も重要です。
物件の申込書でも電話番号は必ず記入します。
その際、自宅固定電話や携帯電話、勤務先電話番号のほか、連帯保証人や緊急連絡先など、複数の連絡先を記入しなければなりません。
では、これらの連絡先を誤って記入してしまったらどうなるのでしょうか。
入居審査では、借主の勤務先への在籍確認や、連帯保証人・緊急連絡先への確認を行います。
この時点で電話番号が違っていても、不動産業者は最初に記入してもらったお客様受付カードを確認するか、連帯保証人などの他の連絡先で正しい電話番号を取得するためとくに問題はありません。
契約書にも電話番号を記入する欄はありますが、仮に間違ってしまってもそれまでに連絡を取り合っているため、不動産業者が申込書と照合してその場で修正することになります。
このように電話番号は何度も記入する場面があります。
そのため、連絡先を記入せず空欄のまま契約が締結することはまずないでしょう。
不動産業者は、物件紹介や申し込み、契約準備といった契約前の段階でお客様と万が一連絡がとれなくても、それを白紙に戻して他の借主を探していけばいいのです。
貸主や不動産業者は、借主が契約後に電話番号などを変えたため連絡が取れなくなったり、行方不明となった場合どう対応するのか?
契約を済ませて入居した後でも、近隣からの騒音の苦情や契約更新時の連絡などで、不動産業者などは借主に電話をかけることがあります。
この時、電話番号が変わるなどして連絡が取れない場合、どう対応するのでしょうか。
まず始めは直接部屋を訪れます。
すでにその物件に居住していないケースや、一人暮らしの世帯であれば病気などで倒れている可能性が考えられるからです。
何度訪れても不在の場合は、借主に連絡してもらう旨を記載した手紙などをポストに投函します。
場合によっては、隣の住民に情報を聞くこともあります。
連帯保証人や緊急連絡先も確認しますが、保証人などは親戚・知人の場合が多く、それほど親しい関係でないことから借主の情報はなかなか掴めません。
これらの方法でも連絡が取れない場合、他に有効な手段がないのが実情です。
家賃の滞納があって行方不明になった場合は、法的な手続きに則り、まず裁判によって賃貸借契約の解除および建物の明け渡しを認めてもらい、その判決に基づき強制執行を行って家財等残置物の処分をしていきます。
これは、借主が夜逃げした場合と同じような対応になります。
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連絡先の変更を伝えなかった場合、契約解除や損害賠償の請求などあるの?
貸主や不動産業者への届け出を怠った場合は契約上で問題があります。
宅建協会で定めている一般的な賃貸契約書には、告知義務として入居者の状況が変わったときには知らせなければならないと書かれています。
この告知義務には「借主の連絡先(電話番号)」の項目も含まれているため、変更の連絡をしなければ契約違反となります。
しかし、違反だからといって直ちに契約解除となってしまうかというと、そうではありません。
それは、契約解除は契約当事者の信頼が著しく損なわれることが前提となるからです。
よって、連絡先の変更届を怠った程度ではそれに該当しないため、すぐに契約が解除されて強制的に退去を求められることはないでしょう。
ただし、家賃を滞納しているなど重大な債務不履行の状態で、督促の連絡が来ないようにわざと連絡先変更の届出をしない場合は契約解除に該当する可能性があります。
まとめ
申し込みから契約に至るまでの間、不動産業者からは何度も連絡先の記入を求められます。
そのため、連絡先を伝えなかったり間違えた状態で、入居まで至ることはまずないと言えるでしょう。
しかし、入居後に電話番号などが変わった場合は、きちんと貸主や不動産業者に伝えなければ重要な連絡ができなくなります。
これは、契約で定められている告知義務に違反しているので注意が必要です。
先述したとおり、契約違反だからといってすぐに契約解除されるわけではありませんが、貸主の連絡がないことで貸主にとって損になる場合があります。
それは、快適な賃貸生活を送るうえでとても重要な情報がすぐに入らないからです。
たとえば上階からの水漏れなど、入居者にすぐに伝えられるべき建物管理上の問題があっても、連絡先を伝えていなければそれを知ることができません。
また台風や地震など、災害時の緊急対応についての情報も入りません。
よって、連絡先が変わった場合はすぐに伝え、貸主や不動産業者との良好な関係を維持していきましょう。