禁煙マンションってもっと増えればいいのに!その実態と今後の見通し
[公開日]2017/06/26 [最終更新日]2017/09/25 賃貸物件,物件探し
レストランや交通機関など、公共の場所での禁煙が当たり前となった現在、タバコを吸わない人にとっては、思わぬところでタバコの煙やにおいがすると嫌に感じる場合も多いでしょう。
しかし受動喫煙の被害を長時間受けやすいにもかかわらず、生活の場であるマンションなどの賃貸物件が禁煙になっているところはまだまだ少数にとどまっています。
そこで、実際に禁煙マンションの物件はどのくらいあるのか、なぜ現状増えていかないのか、そして今後どうなっていくのかという見通しについて紹介します。
日本の喫煙状況
JT(日本たばこ産業)が行っている『全国たばこ喫煙者率調査』によると、2014年の喫煙率は19.7%で調査開始以来初めて20%を切りました。
2009年からの5年間でみても5%以上低下しています。
また男女別でみても、男性は30.3%、女性は9.8%でいずれも過去最低の数値となりました。
男性の喫煙率にいたっては、半世紀前と比較すると実に1/3近くとなっているのです。
日本だけではなく、喫煙者の減少は世界各国とも共通です。
とくにアメリカ、スウェーデン、オランダ、デンマークなどは禁煙が進んでいるといえます。
2016年5月31日の『世界禁煙デー』に合わせて行われたイベントでは、厚生労働省の研究班によって推計された日本の受動喫煙による死亡者数が発表されました。
その発表によると、受動喫煙が原因で亡くなる方は年間約1万5千人で、そのうち2/3以上が女性だということです。
日本も少しずつ禁煙は進んできています。
しかし世界では、全面的な屋内禁煙が法制化されているというのが主流となっています。
マンションなどでの受動喫煙
タバコを吸わない方、においや煙が嫌な方にとって、窓を開けてくつろいでいる時にタバコのにおいが自室に立ち込めてきたら、せっかくのさわやかな時間も台無しとなります。
だからといって、ただ窓を閉めれば良いというわけではなく、暑い時期であれば外の涼しい風を取り込めなくてエアコンを付ける必要もありますし、時には空気清浄機を使用することもあるでしょう。
タバコを吸わない自分が、なぜここまでしなければならないのかと思うかもしれません。
しかし集合住宅では、ルール違反でなければ喫煙者がタバコを吸うこと自体何も問題ないわけですから、一方的に苦情を言ってもトラブルに発展するケースが出てきます。
とはいえ、窓際やベランダ、換気扇の下でタバコを吸う場合、自室内の受動喫煙は避けられても、他人に被害を与えてしまっているのが実態です。
病気のリスクが蓄積する期間の長い小さなお子さんのいる家庭では、健康面を考えて受動喫煙に対して特に敏感となるでしょう。
禁煙マンションなどの禁煙賃貸住宅はどのくらいあるのか
そこで望まれるのが、タバコを吸うことを禁止した禁煙マンションの物件です。
現在このような近年マンションはどれくらいあるのでしょうか。
統計的なデータがなかったため、不動産情報サイトのSUUMO(スーモ)で『禁煙』をキーワードに検索しました。
日々登録件数は変動するため、あくまでキーワード検索時のデータではありますが紹介します。
関東の賃貸住宅を例とすると、全体の34万6千件に対して、禁煙マンションは847件ヒットしました。
これは、全体のわずか0.24%の構成比です。
さらに東京に限定すると、21万2千件に対して561件でした。
0.26%と多少増えましたが、いずれにしてもごく少数であることがわかります。
東京だけをみると、3K以上の物件はワンルーム・1K・1DKの2倍以上の件数がありました。
また2K・2DK・2LDKもワンルームなどの一人暮らし用の物件よりも多くありました。
ということで、禁煙マンション自体は全体からみればわずかですが、その中でも部屋数の多いファミリータイプの方がより多くあると言えそうです。
ほかには、東京だけをみると禁煙マンションのうち約27%が、契約で期間を定めて更新されることのない定期借家契約の物件です。
定期借家契約の物件は全体からみれば少ないですが、そのなかの多くが禁煙マンションになっています。
これは貸主が戻ってきたときに、部屋が黄ばんでいたり、タバコのにおいが残っていることを嫌うからと推察できます。
ただ、禁煙マンションといっても賃料水準は高いことはありません。
一般的な賃料決定要因である、立地・間取り・築年・グレードなどによります。
『禁煙』の範囲
禁煙マンションだからといって、マンションの敷地内すべて禁煙とはかぎりません。
『禁煙』と言っても中身はさまざまです。
原則禁煙
『喫煙の場合は退去時に修繕費を負担』と書き加えられたものもありますが、これは『喫煙したら壁紙の張り替えなどを退去時に負担してもらいます』というものなので、喫煙自体を禁止するものではありません。
室内禁煙
この『室内』にはバルコニーなどは含まれていない場合が多いです。
逆に言えば部屋の外では吸っても良いということなので、バルコニーやベランダでタバコを吸う、いわゆるホタル族はOKです。
これもマンション全体の受動喫煙防止を目的としたものではなく、室内での喫煙は違反だと示しておくことで原状回復費用を取りやすくするためともいえます。
バルコニーなどを含めた建物内禁煙
この表示が本来の禁煙マンションといえます。
建物内のすべての場所で吸えません。
敷地内禁煙
もっとも明確な表示がこれです。
建物内、部屋の中や外に関係なく、マンションの敷地内も吸えません。
そのため、喫煙者が住むことはできない物件でしょう。
禁煙マンションが普及していない理由と今後の見通し
なぜ禁煙マンションが増えないのかと言うと、貸主は禁煙の制限をしないほうが嫌煙派と喫煙派の両方の顧客をターゲットにできるからです。
これは、いまだに多くの居酒屋など酒の飲める店でタバコが吸えるのと同じで、たとえレストランなどの食事がメインの場でどんどん禁煙が進んでいても、喫煙派の顧客を逃したくないのです。
マンションは共用部分を除いてはプライベートな空間であるため、最終的には借主の判断に任せていることが多いと言えます。
一方で、禁煙マンションとして募集している貸主は、増え続ける嫌煙派の方に顔を向けることにより入居率のアップを狙っています。
喫煙人口は減り続けています。
現状で20%を切っている喫煙率は、そう遠くない将来、10%かさらにそれ以下へと減っていくでしょう。
こうなれば、タバコを必要としない多くの人たちに対して、受動喫煙のリスクのある環境を生活の場として提供し続けることはできなくなるはずです。
そのため、今後禁煙マンションが増えていくものと予想されます。
まとめ
賃貸マンションの貸主は、喫煙者の借主を取り込めなくなることを敬遠して、禁煙マンションになかなか踏み切れない現状です。
これを短期間に大きく進める特効薬は『全面禁煙』が法制化されることでしょう。
しかしその前に、私たちはある事実をきちんととらえて行動することが必要です。
ひとつは受動喫煙により亡くなっている日本人が年間約1万5千人に及び、その約2/3以上が女性であるという事実。
そして、海外では飲食店を含めた全面禁煙をしても、客足が遠のいたり売り上げが落ちることがなかった一方、脳卒中や呼吸器疾患による入院患者が減ったという事実です。
需要と供給のミスマッチは、需要者側が強く要求することで急速に解消できるかもしれません。
タバコを吸わない方や嫌煙家が増える一方で、貸主である供給側が対応できずに増えていかない禁煙マンション。
それを変えていくためには、需要者側である借主が「禁煙マンションありますか」と、どんどん物件探しに行けばいいのです。