借りた物件を勝手に人に貸すとペナルティはある?お金を取らなければいいの?
[公開日]2017/06/12 [最終更新日]2017/09/25 賃貸物件,契約違反
最近はAirbnbによって多くの宿泊先が提供されているなど、賃貸物件の転貸は、はやりとなりつつあります。
これは貸主の承諾を得ることで行われていますが、勝手に行えば無断転貸として当然いろいろな問題が出てきます。
そこで賃貸物件の無断転貸とその重大さについて、民泊という新しい転貸の形、Airbnb物件もあわせて紹介していきます。
無断転貸は法律違反
「又貸し」という言葉を一度は聞いたことがあるとは思いますが、法律的には転貸と言い、借りたものをさらに別の人に転がすように貸すことです。
又貸しついては民法612条で次のように定められています。
1項「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲渡し、又は賃借物を転貸することができない」
借りたものを転貸するためには貸主の承諾が必要なのです。これに違反した場合の契約の取り扱いは次のように規定されています。
2項「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる」
不動産の賃貸借においてもこの法律上の定めにより、賃貸人は無断で転貸された場合契約を解除できるとされ、契約で無断転貸禁止が盛り込まれていないときでも適用されます。
信頼関係が破壊されると契約解除に至る
しかし、不動産の賃貸借契約は不動産貸主と借主の信頼関係に基づいた継続的な契約関係であるという点が、売買が一度きりの取引である他の契約とは大きく違います。
よって、無断転貸の事実があった場合でも、貸主がすぐに契約を解除できるとなれば、契約を継続させようという不動産賃貸借の本来の目的に反する可能性があるのです。
不動産賃貸借の契約は「当事者間の信頼関係を破壊するといえるほどの重大な背信行為があった場合」に限って解除できると判例によって明らかにされています。
そのため、無断転貸が直ちに契約解除になるとは言い切れませんが、貸主が信頼関係は崩れたと認識すれば、契約の解除及び建物の明渡し請求訴訟を起こされる可能性があります。
また、不法行為あるいは債務不履行による損害賠償として転貸期間中の家賃の割り増し請求をされることもあります。
それだけ、貸主に承諾のない転貸は契約上重大な問題なのです。
お金を取らなければ転貸は問題ないの?
ところで、契約者名義も支払いも自分のままで、お金を取らずに知人などを住ませた場合はどうなるのでしょうか。
住ませた人との間柄によって違いはありますが、この場合でも一般的には転貸とみなされます。
例えば親が契約名義人となって家賃を支払い、その子供を住ませるはよくあります。
この場合も転貸ではありますが、無断で子供を住ませても貸主には何ら損害はないので、信頼関係が大きく崩れることはないでしょう。
しかし、愛人の住居となれば、状況によって解釈は変わります。
転貸に該当するかどうかはお金を取る取らないが直接的に関係していません。
いずれにしても、借主以外の人が住むときには貸主の承諾が必要だということです。
貸主の無断転貸への対応
転貸していることが分かった場合でも、家賃がきちんと支払われているなど、あまり実害がないということで対応を後回しにしていると、転貸を承諾したと解釈されてしまう可能性があります。
これは「黙示の承諾」といわれ俗にいう暗黙の了解です。
民法612条1項にある転貸の承諾は、貸主が何らかの形で意思表示すれば足りるため、ただ放置している状況でも承諾と同じようにみなされる恐れがあるのです。
貸主として転貸を承諾しないのであれば、まずははっきりと意思表示をして対応することです。
契約を解除するのか、転貸を解消させて継続するのかは、意思表示の後に法的な措置をとって決定すれば良いでしょう。
民泊も転貸の物件が増えている
Airbnbとは旅行者が宿泊先を探すときに、提供する側のホストと結びつけるネット上のサービスです。
最近では民泊可能な物件をAirbnb物件とも呼びます。
この物件の提供元は、物件所有者はもちろん、他にも所有者から一旦借り上げて借主を募集するサブリースを業とする不動産会社や、貸主の代行をしている業者などがあります。
いずれも貸主から民泊用として転貸の承諾を得た物件なので、契約書上でも転貸が可能とされています。
貸主の承諾なしに無断で民泊のサービスを提供すれば、先述しましたが相当なペナルティを覚悟しなければなりません。
現状民泊への理解はあまり進んでいません。
そのため、無断で転貸した場合は契約解除に至るケースが多く発生してしまいます。
しかし、きちんとした転貸の手続きさえ踏めば、所有者は直接募集できないユーザーに対しても営業チャネルが広がるので、相当なメリットとなるでしょう。
貸主の民泊への意識
貸主は外国人に部屋を貸すことについて通常の契約でもまだまだ後ろ向きです。
それが、顔も見えず誰が使っているのかも分からない状況となれば、さらに不安となります。
また、多くの旅行者が出入りするので、マナーの点なども危惧しなければなりません。
そのため、民泊は一般的にさらに強い抵抗感があります。
結果、民泊を強く拒否する貸主が多くなっているということです。
しかし、最近では古い物件の空室率が高くなってきたり、家賃の下落が深刻です。
そのため、打開策として民泊を取り込もうとする所有者も出てきています。
今後も外国人旅行者は増える可能性があるため、宿泊先の確保は欠かせません。
賃貸物件の空き家もどんどん増えてきています。
どちらも解決するためには、ユーザーの顔が見えるような仕組みなど、新たな法的整備によって相互理解を高めるということが必要でしょう。
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まとめ
最近では増え続ける外国人旅行者の受け皿として、民泊を政府が推奨しています。
しかし、制度面の整備だけでなく、外国人を受け入れる文化そのものが定着していないため、なかなか一般的なものとはなりません。
ただ、不動産の転貸自体は建物所有者が直接ユーザーを探さなくてもよいという、大きなメリットのある方法なので、空き家対策として今後ますます増える可能性はあります。
転貸のメリットを大きく活かすには、安心してユーザー探しを任せられる仕組みが重要となるでしょう。
以前は借主が無断で第三者に貸してしまい、それが反社団体や宗教関係であったり、または違法な営業行為の拠点となることがありました。
過去と現在では理由は違いますが転貸の問題は解消されていません。
貸主もユーザーもお互いが満足して納得いくような解決法を早急に整備し、今後の空き家の増加問題や外国人旅行者の増加に対応してほしいものです。